あんた、引っ越しするんだって?
ちょっと顔見せにおいで。
と電話があり伺う。
なんだよ、黙って行っちまったのかよ、アイツは
なんて言われたくないから来てくれたんでしょ。
と言われるのも嬉しい。
緑内障で右目が見えなくなって世界が半分になってね。
それでいいんだけどね、年寄りだから
とも言う。
でも、あんたは広く世界を見なきゃだめだよ、まだ若いんだから
でも、こんな田舎に、よく12年もいてくれたねえ。
と言われるのも嬉しい。
母と同い年のこのおばあちゃんからはいろいろ教わっている。
彼岸明けの天気が良いと、その春はずっと晴天が続くんだよ。
その通り、毎日晴天暑いくらい。
当地に越してきたころ、地震時計を教わった。
でも、あの日以来、地震ばかりで何でも当たるような気もします。
それはさておき、
懺悔の経文を唱える人は多いけれど
実際に懺悔している人はどれくらいいるのだろうか
ものはいらないと言う人も多いけれど
実際にどんどん捨てる人はどれくらいいるのだろうか
全国大会優勝なんていうものではなく、
なわとび大会参加賞
50メートル走4位
読書感想文コンクール佳作
これらの賞状賞品を
せっかく今までとっておいたのだから、捨てないで保管しておきましょう
という人と
何でこんなものとってあるんだ、いらんわ
と捨ててしまう人がいる。
掃除をしていると、
どこの国のものだかわからない外国コインがたくさん出てきたり、
15年前に作ったピカピカの泥団子もある。
5年以上着ていないセーターは捨てる
5年以上仕舞ったままの袈裟は捨てない
3年以上開いていない本は捨てる
3年以上読んでいない経本次第は捨てない
40年前の新聞記事切り抜きを張ったスクラップブックは捨てる
40年前の乗車券と切手のコレクションは捨てない
こんな分類をしている事自体が無駄である。
こんなことをしているから生活が向上しないのだな、とも思う。
それでも、
ジョディ・フォスターの写真は捨てる
D51の写真は捨てない
アルバムを開くと、
学生時代はものすごい美人だったけれど、今はその面影がまったく無い顔があり、
昔は猿と見分けがつかなかったのに、今では堂々たる紳士の顔がある。
あの年に漬けた梅干しも30キロある。これは縁者がもらってくれた。
あの時屋根から落ちた瓦は、そのまま庭に積まれている。
あの年の手帳は、ちょっと迷ってから捨てた。
そしてタンスの奥に、子らのへその緒と、どこのものだかわからない小さなカギを見つけ、
へその緒は妻に渡し、
カギは僕のポケットに入れた。
欲しいからではない。
どこに捨てたらよいのか分からないから。
ちょっと顔見せにおいで。
と電話があり伺う。
なんだよ、黙って行っちまったのかよ、アイツは
なんて言われたくないから来てくれたんでしょ。
と言われるのも嬉しい。
緑内障で右目が見えなくなって世界が半分になってね。
それでいいんだけどね、年寄りだから
とも言う。
でも、あんたは広く世界を見なきゃだめだよ、まだ若いんだから
でも、こんな田舎に、よく12年もいてくれたねえ。
と言われるのも嬉しい。
母と同い年のこのおばあちゃんからはいろいろ教わっている。
彼岸明けの天気が良いと、その春はずっと晴天が続くんだよ。
その通り、毎日晴天暑いくらい。
当地に越してきたころ、地震時計を教わった。
でも、あの日以来、地震ばかりで何でも当たるような気もします。
それはさておき、
懺悔の経文を唱える人は多いけれど
実際に懺悔している人はどれくらいいるのだろうか
ものはいらないと言う人も多いけれど
実際にどんどん捨てる人はどれくらいいるのだろうか
全国大会優勝なんていうものではなく、
なわとび大会参加賞
50メートル走4位
読書感想文コンクール佳作
これらの賞状賞品を
せっかく今までとっておいたのだから、捨てないで保管しておきましょう
という人と
何でこんなものとってあるんだ、いらんわ
と捨ててしまう人がいる。
掃除をしていると、
どこの国のものだかわからない外国コインがたくさん出てきたり、
15年前に作ったピカピカの泥団子もある。
5年以上着ていないセーターは捨てる
5年以上仕舞ったままの袈裟は捨てない
3年以上開いていない本は捨てる
3年以上読んでいない経本次第は捨てない
40年前の新聞記事切り抜きを張ったスクラップブックは捨てる
40年前の乗車券と切手のコレクションは捨てない
こんな分類をしている事自体が無駄である。
こんなことをしているから生活が向上しないのだな、とも思う。
それでも、
ジョディ・フォスターの写真は捨てる
D51の写真は捨てない
アルバムを開くと、
学生時代はものすごい美人だったけれど、今はその面影がまったく無い顔があり、
昔は猿と見分けがつかなかったのに、今では堂々たる紳士の顔がある。
あの年に漬けた梅干しも30キロある。これは縁者がもらってくれた。
あの時屋根から落ちた瓦は、そのまま庭に積まれている。
あの年の手帳は、ちょっと迷ってから捨てた。
そしてタンスの奥に、子らのへその緒と、どこのものだかわからない小さなカギを見つけ、
へその緒は妻に渡し、
カギは僕のポケットに入れた。
欲しいからではない。
どこに捨てたらよいのか分からないから。
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